アサイヤス王子

猫、かえる Cat’s Homeのアサイヤス王子のネタバレレビュー・内容・結末

猫、かえる Cat’s Home(2019年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

今尾の映画は絶えず動き続ける

「猫、かえる」
コメディである。そしてフランス映画である。

モトーラ世理奈のゆったりとした雰囲気に騙されそうだが、この映画が持っている移動のエネルギーは尋常ではない。

主人公の女性が元彼の家から猫を引きとるという短い時間のシークエンスにアクションがびっしりと詰まっている。それに加え、動きを導くために構成されたプロットをただなぞるのではなく、モトーラ、そして共演の品田誠演じる元彼が映画の世界で奔放に泳げるように、今尾は仕掛け続ける。

メモ書きするとこんな感じだ。

陸橋
降りる
歌う
歩く
写ルンです
撮る
花と鍵
ネコ
元彼
くしゃみ
またネコ
隠れる
ソファ
宅急便
いなくなる
指なめる
探す
走る
怒る
こける
平手打つ
横たわる
イマカノ来る
泥棒〇〇
ネコくる
三人歩く
渡される
一人歩く
撮る
雪が降る
ネコ
名付ける
また、歌う

ネタバレ必至で恐縮だが上述の通り全編ほぼアクションしか存在しない。モトーラや品田はそれぞれの持ち味をこの動きの中で存分に発揮している。

そして三鷹〇部作共通の舞台大宰橋がさらに列車の動きを加えるのである。

舞台挨拶で今尾は電車について言及していたが、原初的にアクションを希求する映画という装置が作品の骨格とぴったり重なっている。それはまるでリュミエール兄弟が汽車の到着を撮らざるを得なかったかのようにだ。

監督が認めるかは分からないが「猫、かえる」にはジャック・リベットの映画と同じ血が流れている。映画というメディアが持つ欲望を今尾ほど満たす監督はそう滅多にいないだろう。

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