大傑作。とある家族の一夏の時間を描いた映画。そこには淡々と日常が繰り広げられるが、映画としての構図が上手すぎてかけがえのない一瞬として切り取られていく。
例えば、食事。誰と、どこで、何を食べるか。家族は全員揃っているか。一階で食べるのか、二階で食べるのか。自然のものを食べるのか、出来合いのものを食べるのか。全てが示唆的でかつ嫌味がない。
例えば、睡眠。誰が隣にいるのか、寝る前に何があったか。蚊帳。一日の終わりとしての睡眠。家族のその日が凝縮されている。
そして何より巧妙なのが窓の構図。窓越しの構図が意図的に描かれるが、そこでは葛藤や煮え切らない思いが暗示される。それが思春期の少女のアンビバレンツな心性を細やかに描き切るとともにこの映画の物語性を鮮やかに演出している。本当に上手い。
光の差し方、家具などの調度品も美しく、それが、モヤッとした展開が重くなりすぎない、あくまで日常の一幕として昇華されるのに一役かっている。
「本当は夏休みなんて好きじゃない」のキャッチコピーがなんと秀逸なことか。