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羊飼いと風船のAMのレビュー・感想・評価

羊飼いと風船(2019年製作の映画)
4.5
チベットの伝統・宗教を重んじる夫と近代的な中国の政策、ついでに家庭のお財布事情の板挟みにあう一家の母。
既に3人の息子がいるこの家庭にはもう1人子供を産む余裕はない事から腹の中の子の中絶を望むものの、次の赤ん坊には死んだ祖父の魂が転生するという高僧の言葉を盲信して出産を望む夫。

伝統を重んじる夫だが移動手段は馬を捨ててバイクに乗り、携帯電話で連絡をとったりと便利なものは現代風にアップデート。
昔と今を両立させるのはとても良いことだと思うが、それなら思考の方ももう少し現代社会に準じた考えに出来ないものかと。
四十九日がまだ過ぎていない祖父の魂が転生するなんておかしいと反乱されても例外もあるんだと言い返す。
高僧の言葉を盲信するがあまりに仏教の考えの一つを無視してしまっている様に見える。
要は自分の都合の良いように物事を選んでいるだけなんだろうなあと思った。自分勝手。
自分の頭で物事を考えずにいいように伝統に沿った生き方をし、都合が悪くなった時や便利な時だけどこからか例外をもってくる。
全く共感できなかったし、哀れにも映った。
ずっと「お母さん、頑張ってーー!!」だった。
伝統や宗教といったものは良く分からん。

大自然を舞台にした牧歌的な物語かと思えば中身はずっしりと重い家族の話。
表現は良くないがしんどい映画。
その分色々と考えさせられる映画でもある。

舞台のチベット大草原はまさに別世界のような美しさで物語とは違ってかなり癒される。
この景色を見るだけのために映画館に行っても損は無いかも。
長回しもくどさが無く、とことんリアルなチベットの伝統的な生活を見れたような気がする。

伝統と現実、その両方を上手いこと両立出来れば良いんですけど。
伝統はたしかに大事でしょうけど、実際に生きているのは現実の世界ですからねえ。

ラム肉が美味しそうでした。
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