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グンダーマン 優しき裏切り者の歌のkirinのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

冒頭のハリネズミを慈しむ場面から彼の優しさがうかがえる。

駆け出しのミュージシャンが、活躍の場をエサに国家に協力させるやり口にのってしまい後に苦しむ。実在の人物を描いているので本当にこんなことがあったということを知らしめるために東独出身の監督が制作したのは意義深い。

グンダーマンが謝ることを拒んだのは、まさかとか不本意とかの思いが強かったからだと推察した。43歳の若さで亡くなったことから、ちょっとした密告によって大事になることを深く考えずに国家保安省Stasiに協力してしまったことへの心の中の苦しみの深さがうかがえる。グンダーマン役を東ベルリン出身のアレクサンダー・シェールが演じており、深い心情が伝わってくる。

娯楽映画ではなく見ていて楽しくはない。内容が内容なだけに苦悩で始終暗い感じだ。だが、子どもがかわいらしく、炭鉱の労働者仲間や一緒に音楽活動をした演奏が上手なバンドのメンバーの気の良さに救われる気分になる。炭鉱で、西側の高級車で視察に来た高官に、なぜトラバントで来ないのかと聞いたり、作業の効率や安全性の懸念に物申す場面は痛快。

海外公演をちらつかせてミュージシャンを国家体制に引き入れるというのは他でもありそうな話だと推察する。グンダーマンは優しさゆえに苦しんだ。短命ではあったが濃い人生だったと思う。

奥さんは眼鏡を掛けたり外したり髪型が変わったり、同居人も変わるので、同一人物?と疑問を思ってしまった。
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