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水の影のsucioのレビュー・感想・評価

水の影(2019年製作の映画)
3.9
結婚前にレイプ被害に遭い処女を失うことは社会的には死亡したのと同様で、本人のみならず一家の恥となる。唯一の救済策は加害者に"結婚してもらう"こと(これは加害者が上位階級である場合。下位の場合は加害者一族郎党は残虐な復讐を受ける)。こんなインドあるいは南アジア特有の事情を知っていれば本作の少女の行動も理解できないことはない。だが監督はそんな現状を指弾する社会的メッセージに留まらず、本作でボーヴォワール言うところの「(従属する)第二の性」としての女性をより普遍的なものとして描写したかったのであろうか。その意図はくみ取れるが、とにかく観客を刺激、挑発することを主目的としているようにも感じられた。ダイナミックかつ不穏な映像、音楽には圧倒される。

細かいことだが、物語展開上で不自然なのは、そもそも安宿でボーイフレンドが酒を買いに行かされることになった際、なぜ少女は同行することを主張せず、ボーイフレンドも少女に同行を促さなかったのか。ボスと少女を二人きりにさせるためとはいえ、ひと工夫ほしかった(少女が疲労困憊で外出困難な設定にするとか)。
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