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イサドラの子どもたちのkazukiseraのレビュー・感想・評価

イサドラの子どもたち(2019年製作の映画)
3.8
“ 私は自分のダンスを発明していない それは「私」以前にすでに存在する。太古より眠るダンスを、私の悲しみが目覚めさせる "
伝説のダンサー、
モダンダンスの始祖として知られるイサドラ・ダンカン。
まず、イサドラを知る為に68年イギリス作品「裸足のイサドラ」を観てからこちらを鑑賞した。
20世紀初頭、舞踊の世界に革命を起こした彼女は、1913年4月、二人の子供を事故で亡くし、その痛みに苦しみながら、亡き子どもたちに捧げるソロダンス「母」を創り上げた。
この映画は、それから100年の時を経た現代が舞台。三つのパート、そしてイサドラの「母」と巡り合った4人の女性達の物語である。
始まりから映像は美しく音楽も言葉も最小限であり、静かに物語は進む。とても好みである。
ひとつめの物語、登場するのは振付師「アガド」
彼女は「母」を再現するために、チャートを解読する。楽譜のようなものが舞踊の世界にもあるのだなぁ。勿論、私らが見てもなんのことだかわからない基盤のようなそのチャートで彼女はイサドラを知ろうとする。

ふたつめの物語、登場するのはダウン症のダンサー「マノン」と振付師「マリカ」
「母」の公演を控え練習するマノン。
合間に、スマホで音ゲーをしてるのもまた印象的。
更に印象的だったのが、公演のシーンで曲と観客の表情のみを写したこと。
とても美しい舞踊が頭の中に浮かびあがったから凄いなぁと監督に拍手喝采であった。

最後の物語は、その公演を観に来ていたひとり「エルザ」
足の悪い中年の女性で、こちらは台詞ぜろレベルです。
古き音楽や絵画が後世に残り、私達が目にする機会が訪れる事はありますが
映像のない、舞踊というものを、誰かがこうして受け継いでゆき再現する。それをまた観た人の心を揺さぶり、その姿を映画としてつくり、それを見た私の心もまた揺さぶられる。なんだか凄いなぁと。イサドラさん、あなたのダンス、私みたいなもんまで届きましたよ。「物語は続く」ですねぇ。