くさはら

この世界に残されてのくさはらのレビュー・感想・評価

この世界に残されて(2019年製作の映画)
4.1
42歳の婦人科医と16歳の少女の寂しい2人の魂が寄り添い合う愛の物語ーなんて書くとエロティシズムな作品のようですが、歴史的な背景、この映画の舞台のタイミングが分かった途端、震えがきました。

それぞれナチスドイツのホロコーストによって家族を失い自分だけ生き延びてしまった中年男性と少女が戦後、故郷のハンガリーで出会うが、そのハンガリーもまたソ連の指導者スターリンによって共産国家への道を歩んでいた。ここでもまた、隣人が密かにソビエト共産党に入党し、罪なき人を密告し連れ去って行くという恐怖が2人を怯えさせていた… という事実を整理したうえで心や表情の動きを思い返してみるとなんと繊細な作品であろうかと心が痛くなる。
 
「密告」はナチスドイツでもソビエトでも戦前の日本でも、今でも中国や北朝鮮、もしかしたら…
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