とぽとぽ

スーヴェニア -私たちが愛した時間、後に-のとぽとぽのレビュー・感想・評価

3.5
映画作り=喪失からの再生のプロセス

今はだれか親密な相手がほしい。本来であれば目を逸らしたいような気まずい部分もまた思い出を形作る大事な一部で、だけどその重さに気づくのは往々にして失ってからだから、カメラを向けて改めて対峙してはその瞬間に重い感じたことをつなぎとめる。風化して流れてしまわないように、経験を吸収していつか己の血肉(引き出し・肥やし)とするため。
表現するとは何たるか?…という映画製作の原点に作家として立ち返りながら、自身との対話にもなっている二重構造。『アニー・ホール』でも『恋愛適齢期』でもいいけど、劇中描かれたことを劇中劇として昇華する展開を取り入れ、メタ的な部分に帰結していく本作は、そうした構成も相まってやっぱり前作と2本で1本なんだなと思う作品でもある。
前作で勉学をおろそかにしながら理想だけは大きく語っていた主人公が、前作での喪失につながる経験を経て、やっと地に足のついた自分の中から本当に出てきたものを作品として形作るまでを描いた後編。孤独や悲しみを紛らわせるために無意味な情事を重ねる。本作途中まではその喪失感を埋め合わせるように親しくもない男性たちと体を重ねていたのに、最後には一人でも幸せだと笑顔を見せられるようになった彼女が素敵。
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