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すばらしき世界のpenのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

憎めない映画だった。
街で会社員?に絡むチンピラの描写こういう感じかーとか、介護施設の陰口のこういうのかー、最後の最後でこういう展開かーと細かいところで気になることが積み重なる。

にも関わらず感動しちゃってる自分もいる。私たちが生きる世界がどうしてこんなに面倒くさいかといえば、この世界は人の相互作用によって成立しているから。そして人間はそんなに完璧でなく、故に悪意に満ちている。でもその一方で優しさにだって満ちている。この世界は感情によって満杯になることは無くて、ずっと色々なものが混ざり合い溶け合いながら波を起こしたり凪になったりもする。
その変化が如実に表れるのが、結局のところ人と人との関わりの中においてだ。
その関係性の中で生まれる尊さ、残酷さを捉えた作品全体の目線が、間違いなく心に残ってしまうのだ。

映画が終わればその映画の中で生きている人達の人生もそこで終了する。だからその映画が好きだとその後をついつい想像してしまう。
本作はある意味、その想いを予断なく断ち切る。本作はこの世界についての映画であり、それが充分に描かれれば、それで終わりだからだ。
でもやっぱり、どこか街の片隅で生き続けようしている人がいるんだと、何もかもまだ始まったばかりなのだと、そういう風に感じたかったなーと思ってしまった。「こういう世界、こういう現実なんですよ」といわれてしまったら、何も言えないのだけど。

三上の激しくも純粋な感情、傷の残る背中が映る時に垣間見える弱さが、あまりにも素晴らしいからだろうか。彼と関わる周囲の人が表現する思慮深さも好き。
役者陣みんな素晴らしいです。
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