オーヒラケンタロー

すばらしき世界のオーヒラケンタローのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
3.8
煌々と照らされる陽射しが眩しい世界に、少しだけ雲をかけてくれるような作品。

不寛容な世界で一度ドロップアウトした人間の生きづらさを描いた作品と同時にドロップアウトした人間を社会、我々が受け入れられるのか?そんな道徳心や倫理観を問いかけられる。

今の世の中の生きづらさは、学校のクラスのような箱社会と似たものを感じる。同じ共同体の中で馴染めないものや、はみ出し者は排除しようとする言動や空気感。そうしたアウトロー達の受け皿となった反社も暴対法や排除条例でどんどん無くなる。もちろんそういった組織は無い方が良いが、はみ出し者達の行き場は無くなり追い詰まって行く。

嫌いなものや気にくわないものから距離を置くのは、もちろん一つの手段として正しいと思うが排除するというのはどうなのだろうと思う。方法としては楽だが、それはとても危険な思想だと思う。

この映画の観客の多くは、自身のことを受け入れるかどうか問われる社会側だと思っているのだろうが、誰もが三上のようにドロップアウトする可能性を秘めているのだということを忘れてはならない。