ねぎおSTOPWAR

すばらしき世界のねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
5.0
佐木隆三さん原作 ×  西川美和監督
これはすさまじい掛け算ですね!!
プラスアルファを生み出していると感じました。
皆さん仰ると思いますが、さらに主演の役所広司さんがまたいい!!

役所さん、長崎の出身なんですね。
だから方言は堂にいったもんなんですね。
わたしは福岡の地域ごとの差異を聞き取れる耳は持ち合わせておりませんが、たぶんバッチリ決まっていることでしょう。

本来、《元暴力団員で刑期を終えてカタギになることを誓って出てきた男》の気持ちにはなかなか同調できない。しかし佐木さんの原作、西川さんの脚本と演出、役所さんの解釈と表現・・おそらく全てが見事なんだと思いますが、観客は<三上>の奥底の心根に寄り添うように誘導されます。うん、されました。

まっすぐで、母の愛を求めて、褒めてもらうと嬉しくて・・
冒頭の歩き方、そして出所後の食卓での純粋な涙。

これって年齢や性別やを別にしてとても共感性の高い人物ですよね。

そして三上を演じる役所さんが際立つように、周辺の人物がまた巧い!!
そりゃね、橋爪さんと梶さんのご夫婦に六角さんと北村さん!
絶妙にクールなんですよね。ちょっと偏見を持っている。
それは三上の目線の変化で、最初っから愛に溢れていたの”かも”しれませんが、まっすぐな三上にどこか心が動かされていく。
で、そんな皆さん、特に北村さんに泣かされました。結構この方は肝だなって思いました。

そして最近の一押し俳優 仲野太賀!!
この映画、彼の話でもあるんですよね。テレビからはじかれて一人でやっていくことを決意しているけどなんだか決心もつかずにずるずるとしている男。
これって三上の相似形でもあり、また三上よりまだ幼い部分もある。無性に魅かれたんでしょうね。そして彼に触発されて本を書くことを決める!
役所さんの評価「太賀は映画小僧です。映画大好きです」って。なんだか合間の二人のトークが想像されて良いですね。

****

この映画で一番「すっげー!!」って心で叫んだのは、三上が上手くいかず、白竜さんに電話するシーン。
公衆電話BOXではなく、東京タワー🗼の夜景空撮とメローな音楽と電話の音声。

わたしは痺れました。
泣いちゃうかと思いました。
監督の意図通りかは知りませんが、わたしはこの東京に何人こういう人がいるのかなって想像しました。それは暴力団とかじゃなくて、頑張っているのに社会に受け入れられなかったり、なんか上手くいかなくて逃げちゃう人。たくさんいるでしょ!
映画はそんな人々、観客にもいるはずで、そんなみんなに「大丈夫だよ、みんな一緒だよ」って慰めているかのような、そんなシーンだと感じました。


あとね、三上が久美子(安田成美)の家を訪ねたとこ。
おそらく彼女の娘の「小三」から指折り数えて少しガッカリする演出。
ここと符合するようにラスト手前のデートの約束ね!「娘も一緒よ」って。

いやあ切ない。
そして愛に包まれていて、なんだろう、三上って幸せだったかなあって。
で、今一度響くこのタイトル「すばらしき世界」・・。