ちゃんた

すばらしき世界のちゃんたのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
3.8
殺人の罪で13年の懲役を終えて出所した三上(役所広司)が、世間で一からやり直そうとするものの、世間からの冷たい反応についカッとなり、なかなか上手くいかない。それでも少しずつ周りに理解者が現れて、失敗を繰り返しつつも成長していく。実話を元にしたドキュメンタリーのような話になっている。

なかなか見ていて辛い映画だった。幼い頃から親に捨てられて反社の中で育った三上は、悪者を暴力で倒すことで褒められて育った。だから殺人をしても、刑務所に何回も何年も入っても、悪いという意識が持てない。出所しても前科者として見られる事が耐えられず、また元の組織に戻ってしまう。そこではお勤めご苦労様と労われるからだ。それでも今回はちゃんと世間に戻ろうと努力する。

自分とは違う価値観を受け入れるというのは大変な事だ。しかも彼が持っている価値観がすべて間違っているわけではなく、むしろ彼の方が正しく、世間が間違っている事も沢山ある。でも前科者、殺人者であるが故に、それは世間では受け入れられない。結局のところ、正義を貫き人を助けるのは暴力では無く、信用なんだと気付かされる。世間に信用されなければ誰も助けられない。それがよく分かる作品だった。なかなか良い映画だった。
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