このレビューはネタバレを含みます
劇中では三上の生き様はテレビ番組の映像にはならないし、おそらく津乃田の小説も完成しないであろう。そういう点で、この映画は、見ることが出来なかった三上の生き様を神の視点で見ることができる唯一の媒体だ。
映画は、「見られないものを見えるようにすること」というものだったことを再発見できるとともに、人が人を助けるのはなぜなのか、なぜ我々は1人ではいけないのかを柔らかく、しかし、厳しくも描くクライマックスに涙が止まらない。
西川美和はいままで、人間と人間との距離感や機微みたいなものは神業レベルだっただったが、社会性という意味では少し内向的でとてもクローズな話になりがちだった。今回、世界・社会がどういう形をしているのかを真っ当かつ丁寧に描き、その中に人間の人間たる部分を描くことで、内向きだった世界が外に開けて、相当エモーショナルな映画になっている。
そして、仲野大賀、ほんとにほんとに良い俳優。永い言い訳の池松壮亮もめっちゃ良かったが、この仲野大賀…ほんとに素晴らしい。
音楽も本当に良くて贅沢すぎる2時間。
世界のおかしさとつらさとあたたかさを、あらためて噛み締められる。
絵の好み9
展開の好み9
音楽の好み10
編集の好み9
演技演出の好み9