『すばらしき世界』このタイトルに触れた時、サッチモが歌う『Wonderful world 』を思い出した。刑務所にいた年月、取り残された自分、しかし空は広く青く、星は美しい。なのに世間はこんなにも無情で、生きづらい。真面目に生きようとしても受け入れられない社会を映画を通して知ることになった。仲野大賀さんが演じる津乃田は私たちなのかもしれない。好奇な目、興味本位、しかし彼の犯した罪を目の当たりにした途端に離れる心。けれど、もう一歩踏み込んで罪ではなく、人として向き合った時、本当の優しさが生まれ理解し合うのかもしれない。救われない人生、悪と言われるヤクザな世界の正義。正義のため、愛する人を守るための暴行や殺人と、世間の弱い者いじめや虐待、差別と何が違うのか？自分の正義を殺してまで生きる世間は本当に理想の世界だったのか？誰もが悪と善の心を持ち、誰もが自分の居場所を求めている。彼の就職を祝う数少ない人々、忘れずにいてくれた妻、自閉症の少年、その世界は素晴らしき世界なのかもしれない。その世界は天に通じている。
