ぱお

すばらしき世界のぱおのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.6
「すばらしき世界」
鑑賞前にこのタイトルを観たとき、「あぁ、最後は主人公が社会復帰できてハッピーエンドになる感じかな」と思っていたが…自分は甘かった。
もう、この世界に対する皮肉にしか聞こえなかった。恐ろしささえ感じてしまった。
犯罪もなく、助け合いで溢れているように見える、いまの私たちがいるこの「すばらしき世界」はどす黒いものだな。

「三上さんは、普通になるんです。」っていう言葉は、三上さんの未来への希望のように捉えられる。
でも、何故だろう。三上さんが社会に飛び出して一生懸命働いて「普通」になっていくにつれて、本当に胸が苦しくなった。
ヤクザ仲間の奥さんが「世界は広い、チャンスを無駄にしてはいけない」と言っていたけど、チャンスを無駄にはしなかったはずなのに、三上さんの世界は広がるように見えてちっぽけで残酷な世界に閉じ込められていくようだった。

「怒り」は自己のなかに押し込むべきものではない。弱者を排除する規範に加担することになるから。それは優しさではないと思う。三上さんの場合(いつもではないかもしれないけど)、彼の「怒り」は決して自分を排除した人へのリベンジのために使われてるんじゃなくて、私たちがバラバラに引き裂かれそうになっている今の社会に対してぶつけられていたと思う(暴力を実際にふるってしまうのは良くないけれど…)。絶対に変わる、変えられる。三上さんの「怒り」は「すばらしき世界」への期待や希望だったのかな。
ぱお

ぱお