ペンバートン

すばらしき世界のペンバートンのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.5
一度社会のレールから降りた前科者に対するレッテルや社会復帰の難しさが終始語られていると思いきや、弱者の窮状に見て見ぬふりをすることが個人にとって最適であるが故に殆どの人間が彼らに関わろうとせず、知ろうともしないという現代の抱える本質的な生きづらさ・貧しさへとシフトしていくように思われる。だからこそ極道出身の三上が主人公でありながらも、作品にリアリティと当事者意識が立ち現れてくるし、三上を取り巻く人間達の寛容で豊かで温かい姿が沁みる。ラストのタイトルバックは何とも皮肉めいていて余韻が残る。

個人的には津乃田が三上の背中を流すシーンと三上が真っ黄色の自転車をプレゼントされて喜びながら漕いでいるシーンが大好き。特に自転車のところは、その色もあってか彼が自立してやっていくことができるんじゃないか、という希望に溢れていた。また一層役所広司と仲野太賀が好きになる作品。