エリザベス

すばらしき世界のエリザベスのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

見終わってからタイトルに納得した

自分はいくつになっても素直でありたいと思うけれど、歳をとるにつれてエゴとは必然的に生まれてしまうのか。でも確かに自分の経験から生まれる確固たる何かを持たないとこの素晴らしき世界で幸せに生き抜くこと、あるいは何が幸せかと答えを見つけることが出来ないのかもしれない。たまに思う、素直ってのは不条理の前では砂上の楼閣のようなもので持ち続けたくても生きてく上では邪魔でしかないんじゃないかって。
そう考えた時点で自分の中の素直は失われかけてはいるんだけどそれでもまだ素直でいたいと思い続ける自分もいる事が、人が生来持ち合わせている希望という名の活力だと思う。だから決して成長した自分を変わったと嘆く必要はなくて、ひねくれてしまってもそうありたいと願う気持ちが大事で、その活力が人と人を繋いで時代というものを築き上げてきたんだと信じたい。

刑務所という更生と社会復帰を目指しながらも隔離された「世界」では忍耐力は身についてもこちらの「世界」を生き抜く為のエゴや知恵は身につかない。
だから中年なのに少年みたいに目キラキラさせながら素直さを持ち続けて更生しようと努力するミカミは無性に応援したくなるし、作中でも支えてくれる人達がいた。
他人は自分が思っているよりも自分に無関心だけど、自分が思っているよりも自分を思ってくれてる時もある。
でも人間賛歌ばかりじゃなくて、ミカミが持つ暴力性が人は綺麗事だけじゃ生きていけないっていう現実を突きつけてくれる。でもそのおかげでミカミの持つ人間味と、抗えない人の性みたいなものを垣間見ることができて逆に良かった気がする。
やっぱ本当に「信じたい」って思える人は誠実さとか人柄が良いみたいな信頼度が高い人よりも命削って生きてる様な不器用で醜くて魂剥き出しの人なんだよな、信用出来る云々じゃなくて「この人になら裏切られてもしょうがない」って思えるような人に周りはついて行く気がする。

人から素直という名の光をを奪う不条理は、病気や災害みたいにある程度の予兆はあれどいつ襲ってくるか分からない不安定なもので誰にでも突然訪れるけど、誰にでも訪れるという時点で実は理不尽なんかじゃなくて平等なものなのでは無いかとも思う。俺は神とかはもう信じてないけど運命というものが全ての人に定められていてこの世に生を受けた時点で結末が決まっているんだとしたら結果は同じだとしてもせめてその過程は大事にしたいし抗いたい。それが人の生きる意味に繋がるんじゃないかと思う。ミカミの人生は壮絶なものだったし不条理さが際立つように見えたけど、限られた時間の中で人の温かさと醜さを知り社会の厳しさを感じながらも希望を絶やさず、素直に今を生きようとした姿を俺はいくつになっても見習いたい。この世界は本当にクソだけど素晴らしい。
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