うめ

すばらしき世界のうめのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.3
人生の大半を刑務所で生きた男の再生

己に正直で我慢のできない彼を

世間は簡単には受け止めてはくれない

さびしくても

さびしくても

あの人は帰っては来なかったから

暴力と快楽に縋るしかなかった

それしか選べなかった

「もしかしたら」

そんか問いかけが虚しくなるほどに

立っている世界の空は狭い

「今度こそ」

痩せ細った心を奮い立たせ

大きな一歩は刻まれる



震える程の完璧なキャスティング

純粋な動機と過激な行動
それを剽軽さと狂気で表現する役所広司の凄さよ

卑屈さと見合わぬプライド
真っ直ぐさと気弱さで表現する仲野太賀の器用さよ

しかし
それを上回る
過去から現在
安田成美
梶芽衣子
キムラ緑子
ゆきずりの彼女にいたるまで
母の優しさを知らない彼に
注がれる母性の温かさと力強さ
素晴らしかったです



人は皆
“すばらしき世界”なんてないと疑ったり
“すばらしき世界”を探したり
“すばらしき世界”だと信じたり
それぞれが迷いながら生きていくしかないのかもしれない
うめ

うめ