梅ちゃん

すばらしき世界の梅ちゃんのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0
素晴らしき世界、初めはなんて皮肉の効いたタイトル、と感じていた。

人生の大半を塀の中で過ごした、ヤクザ崩れの人間、三上の再出発の物語。
2021年126分🇯🇵

役所広司氏演じるこの三上という男、どうにも精神が成熟していない。

思い通りにならないとすぐキレる。暴力という尺度でしか物事を測れない、子供みたいな存在として描かれる。

それでも、彼を辛抱強く見守り、信じて待ってくれている人達の存在に涙が零れる。

なお、六角精児さんで泣いたのは人生初の経験。

ようやくあり付いた職場で目の当たりにする社会的弱者に対して行われる人々の無慈悲な理不尽。

三上は必死に自分の感情を抑え込むことを覚え、なんとか新生活への扉を開いてゆく。

そして待ち受ける結末。

怒りという感情が大きな意味を持つ、身体的な設定も絶妙だったと思う。

思い通りにいかなくても、理不尽なことがあっても、報われなくても、何故か暖かな余韻が残る、一人の不器用な男の物語でした。

どうやらこの世界は素晴らしいみたいだ。