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すばらしき世界のsakuのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
3.5
勧められて鑑賞したけど、考えさせられた。

まず思い出したのは彼のこと。
真っ直ぐで不器用で瞬間湯沸かしで気持ちのコントロールができない、反社会的、善悪の判断がつかない、それでいて優しい誰よりも。
この世界は君には生きづらいでしょう、ちゃんと馴染めているのか、無理していないかと思い出すこともある。

次に思ったのは自分のこと。
ネグレクト、虐待、家庭環境、親からの愛情、人が育つために必要な最低限のことを与えられなかった子どもはみんな歪んで育つのだろうか。
私は愛されて育ったけど、でもなぜか幼少期を思い出すと寂しさの感情を思い出す。甘えたくて甘えられなかった、言いたくて言えなかった、我慢した気持ちと言葉がたくさんある。それは今でも影響してると感じる瞬間がある。
だからこそ素直な人が羨ましく思う。
そして、父親からの愛情を感じることができなかったことは私の人間性に大きく影響している気がする。街を歩いているとき父親と手をつなぐ女の子。あれほど羨ましいと思う光景はない。
だからきっと私の恋愛観がこうなのかなって思ったり。

あとは、おじいちゃんのこと。
昔からおばあちゃんに手をあげたり、借金作ったりする人だった、犯罪を犯して刑務所に入り、身内とは絶縁。たった1人身寄りもなく、団地で一人暮らしを。でも体不自由になって1人じゃ何もできなくなって、冷たい部屋で死んでいた。死んでから集まった親族。見ないうちに大きくなったら孫たちに囲まれて、火葬される。そんな人生。幸せを感じる瞬間があったのか。

そして、普通とは何かということ。
支えてくれていた人たち、すごくいい人だし見守っていきたいという気持ちはすごくわかる。でもそれすらも宗教じみているような気もして、三上が社会に適応して馴染んでいくことそれ自体が個性を潰すことで。こっちが普通であっちが異常って思ってるけど、でも普通って何って話で、あっちはあっちが普通なわけで、何も間違えていない。世界が違うと基準が180度変わる。それは正しいのか?そこまですることが三上の過ごしたかった世界なのか?三上にとって素晴らしい世界とはなんだったのか?

そして変わってほしいのに変わってほしくない。変わってしまったら君じゃない。
私の普通は君の普通ではないのだから、
君は君のままでいなきゃ君じゃないのだから。
と思ったあの日のことを思い出した。
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