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グライド・イン・ブルーのWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

グライド・イン・ブルー(1973年製作の映画)
3.4
『「カッコよさ」とは男の妄想である』


一言で言うと男の妄想爆発映画。
主人公のジョニー・ウィンターグリーンは職務を全うするためにベストを尽くす警官であり、如何なる時も己の信念を貫き通すために誰ともつるまぬ孤高の男で、刑事になるという無垢な夢を心に抱き、体は小さいが○◯○はデカくて女にモテモテの精力絶倫野郎である。

その対比として登場する他のキャラクターはと言うと、気が弱くて誘惑にも弱い同僚警官や、権力を傘にインチキな正義を振りかざして弱い者を苛める女心に疎いロリコン刑事等、いかにも分かり易くカッコ悪くて弱い男たちなのだ。


さて、この映画は何故これほどまでに分かり易い図式で創られているのだろうか。
何故主人公だけがやけにカッコ良く描かれ、その上テンガロンハットを被り、ウェスタンブーツを履いているのか。
何故こんな荒涼としたクソ田舎が舞台なのか。

それは、この映画がニューシネマの格好をした西部劇だからである。
タイトルにもなっているバイクは西部劇における馬であり、男のロマンの象徴といったところか。

監督は西部劇の大ファンだそうで、「捜索者」を200回も観ているそうである。うっへえ。
つまり、そういうことである。
宮崎駿監督の「紅の豚」と同様、「かっこいいとはこういうことさ。」の映画なので、監督の「男の美学」に付き合って観るしかないのだな。
(でも、宮崎駿が主人公を豚に見立てたようにこの映画の監督もチビの醜男を主役に起用したりしていて、ちょっとした自虐的な茶目っ気も随所に盛り込まれている。)

映画好きには人気のあるエンディングも、ニューシネマの定型を踏んでいることも加味しながら「こんな幕切れ、かっこいいでしょ?」という監督の美意識に単純に寄り添って観てあげればそれでOKなんじゃないかと。

シリーズ物のTVドラマのエピソード数回分を観るようなチープな作りが、逆に独特の異彩を放っている70年代のチャーミングな逸品であった。(実際、主演のロバート・ブレイクはこの映画に出演した後TVドラマに出ていたのだそうだ。)

因みに、イギリスのサイコビリーバンドGUANA BATZの曲「Electra Glide In Blue」は勿論この映画からインスパイアされたものと思われる。こちらもガレージっぽくてカッコいいぜ。
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