「本当の目的」という邦題。やっつけにも程があります。「ミッドサマー」に誰が「本当の目的」という邦題をつけるでしょう。「アンテベラム」に誰が「本当の目的」という邦題をつけるでしょう。「ハロウィン」に誰が……。でも、どれも、お話の核心部分は「本当の目的」ですものね。生まれてきた子どもに、「にんげん」と名づけるようなものです。
そこに、愛は、あるんか？
最初の数分観て、惹かれなかったら次行こうと思って見始めたら、やめ時を見失いました。要するに冒頭から魅せるわけです。俳優も地味なら舞台も寒村。演出は手堅い。絵も悪くない。と思ったら、途中心奪われるようなロケーションが用意されている。それも、ドヤ！ と見せるような撮り方をしない。なかなかの策士です。
地味で暗いです。マケドニア映画らしい。作中、ロシアを皮肉るセリフがあります。けして美しくはない、トウの立った二人の女の束の間のバカンスなわけですが、結局役者がいいんですね。重い過去とか、現実に出来する刃傷沙汰とか、そういうものは抜きにしてですね、女の友情ものとして舵取りしていたら、もっと感動的な作品になったはず。少なくとも「本当の目的」とはならなかった（そうそう、やっつけと言えば、字幕の漢字が中国の簡体字なのもどうなのよ）。
随所随所にチェロの伴奏が入るのも、ほだされた原因かも知れませんが。
それでも佳品だと思います。
