葉乃

花束みたいな恋をしたの葉乃のレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
1.5
残念ながら、個人的に今年のワースト映画候補となりました。
帰り道に考察していたら止まらなくなり、辛口かつ長文になります。エンタメが大好きな1人として誠心誠意書かせて頂きます。

最初に感じたのは、恋愛にまだ夢を抱いてる中年の男性が作った映画という感想。
こちらの勝手な受け取り方だが、有村架純さんはそういう男性の理想の彼女の象徴に使われたように見えて、作り手のおじ様達を想像して少々気持ち悪くなった。

それはさておき、この作品は、"恋愛に未練がある、心残りがある、別れ方が辛かった恋愛経験がある人、恋愛に夢を抱いてる人、サブカルにハマってた人、内容どうであれ役者に萌える人、"には響くかもな、と感じた。
恋愛にあまり苦労せず、執着もせず、円満な恋愛しかしなかった人には、こちら同様、少し違うと感じるのかも知れない。
でも、人間は、誰もが、何かしら恋をするから。この作品は広く愛されるであろう。響く人には響くだろう。


下記、少し長くなるが、少数派であると重々承知の上に綴る個人の感想である。

まず、坂元脚本という所で既にお察しだが、台詞がポエム調。リアルでは鳥肌ものの台詞が続く。作品のフワフワした雰囲気に自然に乗れた人は恋愛中の当事者のように、何も気にならないだろう。でも映画の雰囲気に上手く乗れてない状態で、ポエム調の台詞は耐えられない物だったりする。お洒落にしようとして酷くダサくなって感じる。

土井監督の表現力で、恋愛の魅力的なシーンが度々描かれているのに、鳥肌台詞が度々鑑賞の邪魔をしてくる。有村架純さんの「こういうコミュニケーションは頻繁に取りたいタイプです」は流石にやり過ぎ。
おじさんの妄想世界。といっても以前の坂元脚本は好きな作品もあるのだが…、今回は、古く、安っぽく、感じてしまい、大変残念に思う。

また、作中には、2015年から、その年の話題や流行りなどの詳しい名称が度々台詞やナレーションに出てくるが、鳥肌ポエム台詞含め、映像と浮いて感じる違和感。このファンタジー性・ポエム感のムズムズは、もしかすると、小説向き。
小説で読んでいる文章なら、今とは違うポジティブな感想なのかも知れない。
映画は映像だから。リアルな人間が、リアルなシーンで、ポエム調の台詞じゃ少々難がある。特に、今回のようなリアルさを魅力的に見せたい恋愛物では。
こちらも恋愛物は普通に好きなので、時にはそういう台詞にドキドキした作品もあるが、それはキャラクターに共感出来た時に限る。

恋を花束と表現したのは美しいと思った。しかし、今回の主役2人の恋愛はそうは映らなかった。
今から話すのは恋愛の仕方の差だとは思うので、ある程度無視して欲しいが…この作品の絹と麦は雰囲気でフワフワなまま恋愛して、浸ってる。中身も深みも無い。同棲してからは何度かギクシャクするが、これまた大した問題ではない。浅い。本当に相手が花束のような恋なら、分かり合おうという態度を見せ合えば良い。しかしこの作品の主役2人は、ただ刺々しい。愛し合う2人にドキドキしないまま勝手に2人がすれ違っていく。そう感じるのは、5年間の恋を2時間に詰め込んだから、薄っぺらく感じるのは、仕方ないのかも知れないけど。というかそれが恋愛なのかもしれないけど。

エモーショナルな雰囲気だけで成り立ってる恋愛だから特に何も分かり合えない。そんな恋愛、恋が冷めたら終わりなのは、そりゃそうだ。別に浸るものでも無い。
ギクシャクした時のお互いのその態度は、もう最初からお互いにとって花束では無かったんだ。雰囲気に酔って、勘違いしたんだよ、お互い次の人探しな。と、心の中でイライラして急かしてしまった。

まあでも、20代前半の恋愛なんて、そんなものなのかもしれない。最近はやりのエモーショナルという言葉で表現するなら、この作品は当てはまる気がする。

こうも否定的に感じるのは実態の無い恋愛感情に振り回される世の人種が大の苦手だからかも知れない。中身がない、深みがない。自分にとっては、恋愛ごっこ、に感じた。胸キュンも切なさも無く、別れた方が良いカップルだね、という見方しか出来なかった。

また失礼ながら菅田将暉さんはあまり良い恋愛をされてないのか、または恋愛物の経験が足りないのか。役として恋愛している男性の愛情を感じなかった。ギクシャクしてる時のイライラや独りよがりな性格の表現は抜群なのに。恋してる男性として魅力的に感じなかった。だから恋愛ものとしてキュンキュン出来なかった。キャストは御二方とも好きなはずなのに。

今までで見た恋愛もので一番何も感じませんでした。イライラばかり、募りました。恋愛は本当にこういうものですか?自分の経験とはあまりに違う。この2人が相性が悪いだけか。付き合いたくない2人である。(主役のお2人がお芝居が上手いからもあるでしょうけど、そうなると、脚本が悪い)
それだけでなく、脇役やストーリーが、何も残らなかった。なんの印象も爪痕も感じない。エモーショナルなのは良いが、全てがふわふわした映画。映画と呼ぶにも、少し違うような。良くも悪くも、日常、日記。

考えれば考えるほど色々無駄に怒りが募るので、まとまりませんが、以上です。これでも言葉を選んで書いておりますが、今回の作品は大変恐縮ながら今年の個人的にワースト映画候補となりました。

上記全てに関しまして少数の意見とは重々承知しております。魅力的な役者の魅力的な映像には間違い無いので、沢山の人に愛される事でしょう。どんなに好評だとしてもハマらない人は居ますから。今回はそれがこちらであっただけ。なので、書いてからなんなんですが、あまり気に留めないで頂きたい。

2人のファミレスでの涙のシーンは、良い時間だった。良い芝居であったし、良いシーンだった。役者も映像も良い時は、台詞すら、要らない。逆に、だからこそ、良かった。
主役のお2人が良い役者である事は間違い無いので、お二人の、一緒でもそれぞれでも、
より刺さる恋愛物を、待ちたいと思う。出来れば、ドラマでじっくり。また違った形で。

0点にしたい所ですが、1.5点は、役者点と、この情勢のなか完成および公開出来たエンタテインメントへの敬意です。
葉乃

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