ゆりぺ

花束みたいな恋をしたのゆりぺのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

麦くんと絹ちゃん、2人の大切にしたいものは変わらないはずなのに時間と共に現実と理想が移り変わっていく。

どのシーンに想いを馳せるかは人によってそれぞれだろうなと思った。

運命なような出会いだった、話すこと見るもの考え方も一緒であぁこの人なのかと思う瞬間、胸が高鳴る瞬間の描写、噛み締めたくなるような幸せ、クライマックように感じた。でも最初の導入でイヤホンから聴こえる音楽は一つのものだがRとLでは聞こえ方が全く違うというものから始まり、麦くんはファミレスでミイラ展の画集を隠し、絹ちゃんは映画版ガスタンクの途中で寝てしまった。他にも似たようなシーンはあるけれど、それらと対応するように麦くんは社会の目に追いかけられ疲労し絵を描くことを辞め、絹ちゃんは興味がない仕事を辞めてしまった。本棚がほぼ同じでも、どれだけサブカルチャーな話で盛り上がれたとしても他人なわけで全部同じじゃないんだよね見えてないだけ?見たくないだけ?で、時が経つと過去に作り上げた偶像と、現実の実体と差異に気付き出して、変わってしまったと勘違いしてしまうし好きだったあの人はもういない感覚に陥る。好きだと思ったあの人は、所詮は自分の中の偶像に過ぎなくて、絹ちゃんは都合のいい夢の中にいて麦くんは夢が醒めないように寝かしつけているイメージ、擦り合わせようとしても見ているものが違うし、2人の共通言語の中で大きな割合をしめていた趣味が無くなった世界では根本的にこの2人においては会話ができないし、2人の親の場面から推測される育ってきた生活環境的にも言葉が通じないに等しかった。そこが虚しくて悲しかった。

でも、枯れてしまった花束も記憶の中で色を咲かせるように、平等にすぎていく時間の中で麦くんと絹ちゃんが過ごした時間は花束のような贈り物として、今後も2人の胸の中で思い出されるのかなと思った。
ゆりぺ

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