くろさわ

花束みたいな恋をしたのくろさわのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.2
「花束みたいな恋をした」は一つの恋の始まりと終わりを描いた物語。

恋愛映画は世に数多くあるけど、他の作品と異なるのは非常にリアルさ。
そして、恋の「始まり」と「終わり」のどちらか一方を重点が置かれているわけではなく、両方を丁寧に描かれていて、最高の幸せ・最悪の寂しさを感じさせるところが凄い。

特に終わりについては、よく恋愛映画の中で病気や事故、浮気、海外に行って大きな夢を叶えるなど、普段の日常からは少し離れた印象が強い。
しかし、「花束みたいな恋をした」では誰しもが恋人と日常を送る中で少しずつ蓄積される価値観や気持ちのズレという恋の繊細な部分が強く描かれている。

心に余裕があったときは楽しめていたはずの趣味が、仕事が忙しくなることで心に余裕がなくなり、一緒に楽しめなくなるとかさ。
相手が喜ぶと思って少し無理した行動が裏目に出るとか。
とにかくリアルで見ていて、過去の恋愛を思い出して本当に辛い(褒めてます)。

そして、最後のエンディングまで最高。
恋が終わる=悲しい・暗いイメージが強いが、それが次のステージに進むことでポップに締めているが朗らかな気持ちで満足して見終えることができた。
あの背中越しのbyebyeとかカッコ良過ぎるわ。

監督・脚本すごいけど、やはりこのリアリティを表現していた菅田将暉と有村架純にあっぱれです。

しかし、それぞれの恋愛事情によって、おそらく共感できる部分が異なるため、人によっては深く過去の傷をえぐられたり、未来への不安を感じたりする可能性があると考える傑作の恋愛映画なんだけども少しオ友人などにはススメしにくいかなって思ってしまう。

でも、予告だけを見て、「はいはい、若者の眩しい恋愛映画ね」って思って見ないのは損です。

本当に傑作だと思います。
恋の始まりは人生で一番幸せな時間と感じ、恋の終わりは死にたくなるくらい人生で一番辛い瞬間と感じるもの。だからこそ、恋は尊いものだと再認識した。
恋愛とは・・・を俯瞰して感じることができる映画だと思う。
「花束みたいな恋をした」は反面教師的な内容を含めた恋愛の教科書だ。
早くも2021年最高の邦画を見た気がする。

ちなみに繊細さを最も感じたのは麦が「電車に乗っているときさ」ではなく「電車に揺られている時さ」という表現したことに惹かれる絹です。
こういう細かいポイントが恋だよねって感じました。

あ、あと「花束みたいな恋をした」を見てちょっとでも良いと感じた人はぜひパンフレット最高にいいのでオススメです