Hiroki

花束みたいな恋をしたのHirokiのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.1
公開当時話題になっていたけれど有村架純があまり好きではなく劇場に観に行く気にはなれなかった。
でも坂本裕二脚本が好きなのとドラマ『コントが始まる』を観ていて有村架純良いかもと思ったので鑑賞。

『花束みたいな恋をした』というタイトルが秀逸で、たしかにこの物語は恋の物語だった。
124分間、愛は一切描かれていなかった。
ラブシーンを見ても愛は全然感じられなかった。
でも泣いた。
劇場に行かなくて良かったってくらい。
一つのどこにでもあるような恋が終わる。
ただそれだけなのに涙が溢れた。
麦(菅田将暉)と絹(有村架純)の5年間の物語の中で、2人が恋人になって同棲をして別れる。
それだけしか確実な事は描かれていない。
何も2人の間での決定的な事が私たちには知らされない。
だからこそ想像してみる。
あの時、麦はなんであんな事を言ったのだろうとか。
あの時、絹はどう思っていたのだろうとか。
どちらかに(もしくはどちらにも)感情移入するのかも含めてあらゆる事象が観客に委ねられている。
そのパズルを組み合わせるような行為を続けていくうちに麦と絹の物語はいつの間にか私自身の物語になっていた。
どーしようもなく平凡で当たり前で普通で、それでもいっちょまえに恋をして幸せになりたいともがいていたあの頃の自分。
劇中でひとつ麦がどーして許せない言動をしていた。
でもそんな言動をしているのもいつかの自分だった。
そんな言動をされているのもいつかの自分だった。
画面に映っているのは自分だった。

花束みたいな恋とは一体どんな恋なのだろう。
カネコアヤノ『ぼくら花束みたいに寄り添って』のようにくっついて離れないような?
劇中で絹が「女の子に花の名前を教わるとその花を見るたびに思い出してしまう」と言っていた契りのような?
花はいつか枯れるように恋もいつかは終わるような?
インタビューで坂本裕二は
「うまくいってもいかなくても、恋愛っていいね恋をしたいね、って思えるようにするのがラブストーリーを観る人との約束だと思う」と話していた。
この坂本さんの言葉こそまさに花束みたいな恋の答えなのかもしれない。

ラストのストリートビューで2人を見つけるシーン。
きっと麦はこれからもたまにこのストーリービューを見て笑顔になるんだろうな。
まさに花束みたいな恋だった。

2021-84
Hiroki

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