ぷりん

花束みたいな恋をしたのぷりんのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.9
絵に描いたように余韻が残る映画だった。

鏡かよと思うくらい価値観や趣味が合うカップルが学生から社会人になることによって齟齬が生じていく物語に見せかけて実は最初から価値観なんて同じわけなくてそれをイヤホンの伏線を使ってひたすら回収し続ける話。

最初は、天竺鼠、今村夏子、ゴールデンカムイなどなど共通点ばかり目立っていたのだけれど、よくよく考えると絹はブログのアクセス数を気にするほどラーメンが大好きだったのに付き合ってから2人でラーメンを食べるどころか絹が食べるところすらなかったし、麦は映画を作るほど好きだったガスタンクの話をしなくなった。最後に分かることだけど、麦はミイラにだって内心引いていたらしい。

振り返ると最初から2人は別人格だったんだよね。恋は人を盲目にすると言うけれど、共通点ばかりに目がいってしまうことの現れよね。鑑賞していた時はこのことに気がつけないくらい引き込まれたが。

イヤホンのLとR云々の話、最初は何言ってんのこの2人って聞いてたけど、同じところに住んでいるのに段々と価値観の違いが浮き彫りになっていく2人を見ていて納得した。
脚本の坂元さんも、監督の土井さんも凄すぎ。

新潟から上京してて花火の話をする麦の父親と、都内に実家があって両親が来て恐らく電通で働いてて五輪の話をする絹の父親。楽しいとか求めずに働くことが責任だと思ってて気が付けばカルチャーへの興味を失う麦と、年収が低くてもやりたいことを仕事にしてカルチャーへの好奇心を持ち続ける絹。
一見別々の比較に見えるけれど、生まれ育った環境も大きい。いくら気が合うからと言っても、価値観の形成は出会う前に決まっている。それがイヤホンの伏線とともに少しずつ露骨になっていくのは見ていて少し怖かったくらい。

きっとこれくらい長く恋人と付き合ったことがあればもっと共感できたんだろうなと思う。時系列が現実だったこともあるし、1996〜2002年生まれくらいにめっちゃ刺さりそう。

あと、人が途中までかじった焼きそばパンなんて自分は絶対食えないけど、それが食える人が見つかったら、その人と結婚するべきなのかなって思った。
あとは、結婚する気のない相手とは同棲しない、同棲するなら1年以内にプロポーズするって言うのも教訓かもしれない。 

「女の子から花の名前を教えられると男の子はその花を見るたびにその女の子のことを思い出しちゃうんだって」
映画のタイトルが花束みたいな恋をしただし、このセリフが出てきた時点で絹は色々考えていたのかも。

大学生活がコロナ禍に見舞われていなければ、あんな大学生活を送れていたのかも知らない(絶対違うw)
そもそも出会い方から羨ましすぎるのも事実。

これから社会人になるにあたって、恋愛の価値観が変わっていくことはもちろんなんだけど、大学生の時にのめり込んでた本や映画にも触れられなくなって旅行にも行けなくなると思うとなんなか寂しくなる映画でもあったなぁ。

いつか人にプロポーズするって決めたら、実行する前にこの映画をまた鑑賞したい。
ぷりん

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