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花束みたいな恋をしたのSTAYGOLDぴあ映画生活のレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.9
家族になろうよ
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出逢ったばかりの姿を、二人が違う場所から見つめた瞬間。それが恋して愛して同志になってしまった二人の月日の証。

LoveとLikeはイコールじゃない。お互いを認め高めあって家族になる覚悟がなければ同じ目線の未来なんかは見つからない。

このタイトルは今の時代の若い二人が出逢って、そこから先の軌跡を描くだけの映画。特に声高に叫ばなくてもすべての世代が観れば解るお話。

ただ、この作品はある意味、世代間の踏み絵と言う側面を持っているのかもしれない。

多様性の時代である今は「結婚」と言うキーワードは、既に着地点ではない。結婚に逃げ込むのが美徳でもなんでもない。それぞれの価値観を共有できなければ全く意味がないのだ。特に男が現実に負けて結婚に逃げ込むのは余りにも情けなくてカッコ悪すぎる。そんな奴は既に魅力が無いのだ。想い出だけで。

常識を考えろ?はあ、だよ。お前が言うな。交渉もせず、味方も創れず、流されるだけで、好きな事に命を賭す覚悟も無いなら初めからイラストで食おうとするな。そんなのは、ただの負け犬の言い訳だ。

あの子の様に別業種から転向して30すぎてから成功を捕まえる人間など山のようにいる。すぐそばに何人もいる。それに若くしてドリームキラーな考え方しか無い奴となんて誰も結婚したくないだろう。

認め合うのが絆だ。守り合うのが絆だ。どっちが上とか下とか無い。なによりオンナはオトコなんていなくても生きていける。逃げられて後悔を引きずる弱虫のオトコとは生命力が違うのだ。

価値観が古い人間が、公的な場所で平気で差別的な発言をしたり、過去の栄光にすがって支えてくれた妻に暴力を振ったりする。彼らは一体何を大切に生きてきたのだろうか。哀しいかぎりだ。

やはり 土井カントクは全ての世代に踏み絵を仕掛けたか。時期的にもジャストミートだ。運が強い。

まー、「いま会い」でもほっこりした「あったかポケットシークエンス」のセルフオマージュや、お風呂での髪の洗いっこ。髪をかわかしてあげるとこ。そして部屋に何日も籠もってずっと…とか。いやー、かわいくて楽しくてあったかくて…でも辛くてせつなくて哀しくてキツい映画でした。そういう時代もあったなあ。

さすが土井カントク。「罪の声」からのこれだもんな、振り幅が広い。きちんと「今の世代」を捉えたシャシンでした。これからも期待してまーす!

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