小石川

バッド・エデュケーションの小石川のレビュー・感想・評価

バッド・エデュケーション(2019年製作の映画)
3.6
教育に携わる予定にあるものとして、なかなか見応えのある、考えさせられてしまう作品だった。
メインストーリーである「公金の横領」はもちろんあってはならないことだしそこに疑念はないが、「教育者としてやるべきことをやっているはずなのに、多くの人はそれに見向きもしない」という孤独感のような、強烈なモチベーションダウンのようなものに薄ら寒さを覚えた。
現場を離れて教育機関の運営や場の管理を担う立場になると、モチベーションや目標を見失って失速してしまう教育関係者は多いという話をよく聞くなかで、そういった背景からもこの事件を見ていると、なんというかやるせないところもあった。
作品の最後に、いわゆるモンスターペアレンツが、明らかに教師の立場から見て「出来が悪い」生徒をよく見せようとまるで道具のように扱う場面で主人公が痛烈な皮肉をぶつけるシーンは圧巻で、主人公の「とにかく目の前の生徒に全力を尽くして教える、学びをもたらす」という熱意には真摯なものを感じたし、それゆえ起きてしまった事件にはもの悲しさを感じた。それをよく魅せている作品だったと思う。
コミュニティが異なると、教育はまるで異なってくるしそれに関わる人の立場や見られ方も変わってくる。主人公の人となりや人間関係のその立場における見られ方も、事件を引き起こしてしまった一つの悲しい原因であったのかなとも個人的には感じた。

作品全体に漂うシニカルな笑いやブラック・ジョークも相まって、見応えのある作品だった。
小石川

小石川