このレビューはネタバレを含みます
初ダーティハリーです。
巷の評価からは古臭い刑事がどんぱちやるだけな映画かと思っていましたが見ると全く違う感想です。
個人的にかなり考えさせられるものでした。
私にとってこの映画は
「法律と異常者」というテーマです。
昔国家権力がかなり人権を侵害していた反省で、
権力分立が徹底されるようになります。
気まぐれややりすぎで権力を乱用せぬよう、ルールを整備したのです。
それにより多くの人が冤罪や人権侵害から救われる世になりました。
その反面、恣意的に人をさばくことがやりづらくなりました。(ハリーと法律家たちとの話す場面から)
法の想定する範囲外の「異常者」は、私達が間違っていると感じてもさばけない場合があるのです。(法律家たちも「自由にしたくはない」と話しているんですがね,できないんです法律じゃ)
権力分立や法律という社会の作り方では,一部の異常者はバツを受けないし、それは仕方のない制度で。それを認識した上での制度なのです。
例えば、人を殺した者はバツを受けるというルールしかない世界があったとします。裏を返せば、人を殺した本人じゃなければバツをうけないということでもあります。じゃあ他人に命令して人を殺させた人は…?この場合の法の想定外の異常者にあたり,彼はこの世界では裁かれないでしょう。
映画の提示するメッセージとしてはこのようなものだと思います。
この映画ではそれを
ハリーを「ダーティ」なデカにすることによって表現。
異常者も社会を形成する「人」です。
しかしハリーは異常者を「人」と認めず(←彼の度重なる人権無視から)、自分たちの社会の「敵」であり「アウトサイダー」として捉えることで戦います。いや、そうしなければ異常者と戦えず、止められなかったのは視聴者が見せられたところです。しかしこんな人権無視の刑事、恐ろしいですよね。そこが「ダーティ」なのです。
この映画は
法律で整備された社会、その欠陥を
ハリーが「ダーティ」にならなければ何も止められなかっただろ?という描き方で、私達に提示しているのではないでしょうか。
権力分立が徹底されてるアメリカらしい映画ですね。