虚構を限りなく現実に近づけていく「役者」という職だからこその
「つまらない現実より面白い虚構だ」
というファビエンヌの価値観が非常に面白い。
そしてそれと対立していく娘もまた虚構を編み出す脚本家、その夫も俳優だが切り分ける派。
そしてその周りの執事(って言い方でいいのか)、気鋭の女優、そして孫娘シャーロット。
いくつもの「虚構」と「現実」が複雑に絡み合って「真実」を創り出していく。
これはそういう「物語」。
そしてこの作品自体も現実のカトリーヌ・ドヌーヴと虚構の役「ファビエンヌ」とで行き来している構造で、メタも含有しているから尚味わい深い。
子役のシャーロットちゃんの可愛さかつ現実感は、流石子役演出の是枝作品と言ったところ。
同じ子役でもスタジオにいた子役役の子(まぎらわしい)は少しばかしの「虚構」のエッセンスが感じられた辺り、そこの細かい違いを出すの上手い。
「真実」は虚構と現実の片方でない、双方から選ぶもの。
「なぜ虚構をつまらない現実に近づけたがるのか?」
という「列車旅行のすすめ」の一節も思い出した。
この作品も、その問いをメタ的に迫ってきている感があって興味深い。
通常版との違いはどの辺なんだろ。