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カモン カモンのnomovienolifeのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.4
今回、Filmarksさんの試写会に当選し、観ることができました。今回の試写会にはトークイベントも含まれていたので、その内容も含め、レビューを書かせていただきます。

【トークイベント】

トークイベントで、Lilicoさんとxよしひろまさみちさんが伝えてくれたエピソードに、ホアキンは映画の中で実際に子供たちにインタビューをしていたそうです。-いつも「インタビューされる側」の彼は、リヴァーについて質問されすぎて塞ぎ込んだ時期も。「インタビューされる側」のしんどさは痛いほど経験してきた彼でしたが、今回「インタビューをする側」になって、初めて「する側」の大変さも、身に染みて感じたとコメントしていた-そうです。

これもLilicoさんが仰っていたことでしたが、-無論大変ではあろうけれども、JOKERのような異様な役と比べると、このように誰でもない普通の人間の日常を演じるのは本当に難しいものだ-と。まさに、ホアキンとノーマンのコンビは、相性といい、その演技の素晴らしさに感服させられる、まさに奇跡のお芝居だったと思いました。

【ウクライナを思う】

一つ一つの質問に対する子供たちの「生」の解答は見事です。彼らの思考、それを自分の感情の中に消化し、言葉にすることの難しさは、我々大人になっても実感します。子供たちは、おそらく多民族国家のアメリカに生きるからこその、自分・親・社会との向き合い方を、模索してきたんだろうと実感します。彼らのインタビューを聞きながら、今まさに日常を奪われいるウクライナの子供たちを思い出し、彼らの言葉一つ一つが胸に響きました。もしウクライナのことがなければ、私たちが、日常を壊されていく様を、戦争とは何かを、目撃していなければ、ここまで真剣に子供たちの言葉を捉えられていたとは思えませんでした。この映画を見る人たちの中には、同じように感じる人がいるのではないか、と思いました。

【笑いと涙】

映画の中で、クスリと思わず笑ってしまうシーンが沢山出てきます。それは子供ならではの剽軽さ、子供の奇抜さに大人が振り回される様子、そして、子供の大人の胸にグサッと刺さる言葉を発したりする場面だったりします。ホアキンとノーマン演じる叔父と甥ならではの距離感から生まれる独特の絆。ジェシー(ノーマンの役)の中で複雑に絡み合う感情、そしてそれを理解しようと必死になるジョニー(ホアキンの役)を見届ける観客のわたしたち・・・決してドラマチックな展開があるわけでもない、永遠の別れが訪れるわけでも死別するわけでもない、ほんの短い「親戚の交流」にもかかわらず、彼らの別れのシーンに、思わず涙が流れたのは、彼らが過ごした時間が「2度と訪れないかけがえのない時間」だからということに気付かされました。

【まとめ】

私たちの中に、埋もれかけていた大切な何かが、ふと顔を出す。

そんな優しい映画です。
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