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カモン カモンのMypageのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
2.9
観て損したと思った映画はひさしぶり。
俺らはマイクなんて見たくないんだよ、マイク・ミルズさんよ…

子供も一人前の人間として扱わなきゃ!という強迫観念が詰め込まれた結果、ジェシーというキャラクターは賢くなりすぎてジョニーは結局どう接していいか分からないままで、生身の子役と整合性が取れずに細切れのモンタージュ編集に。大人が空虚な目で子供の口元にマイクを突きつける痛い映画になってしまった。

いろんな本を読んでいるんだろうし、子供もよく観察してシナリオを書くのは上手だと思うんだけど、映画にはなってない。ヴィヴがジェシーについて、「一人の独立した人間になってきたって感じ」と冒頭に言うのも、子供に対して素直に不安を打ち明けて謝るとかも、取ってつけたような“子供を尊重する”子育てのマニュアル。ジェシーがジョニーに甘えることを覚えたのに気づいて別れようとする選択はよかったのに、結局戻ってきちゃったら、むしろジェシーのためにならないだろう。ベビーシッターとかに預けてしごかれたほうがいいのでは。エピソードの描き方も細切れで断片的で感情が積み上がっていかないし、それぞれのシーンに重みがない。ジョニーがインタビュアーでマイクを持ち歩いているという設定も、打算的な思いつき感が否めない。

ジェシーが空想の設定でお芝居を始めるというのはおもしろくて、それに付き合えないと言っていたホアキンが付き合ってやるかって芝居を始める瞬間とかは流石すぎ。でもそういうくだりはもうちょっと長回しで撮ったほうがいい。ジェシーの言動はたしかに面白いんだけど、的を射すぎているし、演出にコントロールされすぎていて見ていてハラハラしない。途中挟まれるドキュメンタリーみたいなインタビュー映像がいちばんありえない。親しくもない人に向けてあんな距離でマイクを構えて抽象的な質問をふっかけるのはナチュラルに失礼だし、それによって子供たちの声も表情も完全に固くなっていて目も当てられない。音楽が入るタイミングが全部むかつく。エンドロールの音声が気味悪くて流石に席を立ってしまった。

子供を一人前の人間扱いするという姿勢はいいんだけど、それはあくまでま姿勢であって子供は子供だからね。それを大人の都合のいいように振り回して押し付けても子供のためにはならない。そもそもその子が本来持っている純粋な子供らしさが見えないと子供を撮ってる意味はないでしょう。子供を必要以上に子供扱いするのでもなく必要以上に大人扱いするのでもなく、子供は正しく子供として接することが大事だとルソーも言ってる。本の読み過ぎとグーグル検索のしすぎで目の前のことをまっすぐ見られなくなったみたい。

仲良くなって一緒にニューヨークまで来たのに「なんでぼくたちは親しくもないのに一緒にいるの?」って流石に子供はこんなメンヘラみたいなこと言わないだろってなる。ジョニーは結局ジェシーとどう接していいか最後まで分からず、大人を見透かしたジェシーに振り回されたまま終わったように見える。

『20センチュリーウーマン』のときは、そもそも頭でっかちがデフォルトになりつつある現代の大人たちが題材だったからマイク・ミルズ自身の頭でっかちな傾向が相乗してうまくハマった感じだったけど、子供を題材にすると監督の頭でっかちさが鼻についてしまって見れたものではなくなってしまうような。
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