なりゆきで甥を預かることになったラジオジャーナリスト。甥との共同生活は驚きや戸惑いばかりだが、いつしかそれは人生とは何かを考える思索の旅へとなっていく。
唯一無二の人生を人は否応なく「先へ、先へ」と向かっていく。
単なる子育て映画ではない、人の死生観を考えさせる作品。
映画は逆行するカタチで人生を描いていく。
老いてボケて死んでいった母親。今を悩み生きる大人たち。無垢に生まれてきた子ども。
主人公が甥との共同生活で理解できない子どもに振り回されながらも愛情を注いでいく姿は映画的だが、大袈裟に感情的になるような描写はないところがよい。
映画は、むしろ「生まれて死ぬ」という当たり前の死生観を人それぞれがどんな風に捉えるのか?特に子どもは自分の未来をどう考えているかを焦点にしている。
あえてモノクロを選択し、色彩をなくして普遍性を強調した映像も印象的。
決して平坦とはいえない人生が待っていても、人は常に時間とともに「先へ、先へ」と進んでいく。
気がつけば人間としての黄昏が迫っている歳になり、寂寥感に浸っている自分に気付かされてしまった。