人はどんなに話し尽くしても分かり合えることはないし、自分の心の内のことを全て言葉にすることも、人のことを全て言葉で理解することも出来るはずがない。しかしながら、この作品から、言葉をやりとりすることの尊さがひしひしと伝わる。本当に僅かな交流であるのに、自分の本物の気持ちを表そうとするその人間的な営みに感銘を受ける。ただ、時間は前へ前へと確かに進んでいく。不確かさと不全感の中に僅かながら美しい希望が輝くような作品。
劇中のやりとりや引用された言葉から、彼らの心の内は分からないが、確かに我々の心は動かされる。分かり合うことに囚われがちだが、影響を与え合うことこそに意味があるのではないだろうか。
また、大人になると思考が合理的になり、すべての事象を型にはめたように考えてしまっているように感じる。そういった意味で劇中の男の子ジェシーはあるがままの心を表す強さを備えているような印象を受け、妹と向き合うことができない主人公ジョニーの弱さや理論武装を感じとって、色々な会話が生まれているような感じだった。ジョニーの言葉が「ペラッペラ」に聞こえるのは言葉と気持ちの乖離を感じたからかも知れない。
とにかく良い作品でした。
