子どもにはいつも選択権がない。人が自分の身体をどうするか選べるように、大人が結婚をするかしないか選べるように、心身に不調をきたした夫と孤独な息子とのどちらに時間を割くか選べるようには、子どもは選べない。大人が選ばせたことを自分で選んだように扱われる。自分で選ぶんだと思い込んで選べないまま先へ運ばれていく。先へ、先へ。強い言葉や誤魔化しに言い返せなくても、伝える語彙と瞬発力が追いつかないだけで、「僕」の奥には「言葉」がある。大人が些細だと思って乗り越える壁が誰か子どもの希望を奪っているかもしれない。大人はそれでも矛盾の中で子どもを見続けなければならない、どれだけゾッとしても、目を逸らしちゃいけない。子どもはまだ溶けてない凍った大人。子どもとは、とりもなおさず、大人なんだ。
