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ミッドナイトスワンのFilmarksのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.8
どの「言葉」を使うかは、<世界>をどう分節化するかと同義であり、すなわち政治性あるいは暴力性まで帯びうる。「LGBT」、「女」、「母性」はもちろん、「個人名」こそ<世界>から自分を分節化するそのような「言葉」となりうる。

だからこそ凪沙は「母」になりたかった、「母性」に目覚めた、ということが仮に本人にとって事実であったとしても、それを他者の方から当てはめることには違和感がある。

<世界>を分節化する「言葉」を超えて、いかにそれそのもの・実存と向き合えるか。<閉ざされ>から<開かれ>へ。「言葉」を超えて抱きしめることで繋がろうとするシーンが何回も描かれていたのが印象的。

凪沙、一果、りんはストーリー上も互いの実存と向き合い、演者としても演技に対して実存的に向き合っていたようにみえた。

管理するため「名前」や「性別」を問うてくる社会システム、実存と向き合うためでなく体裁のためのLGBT講習、地元からの逃げ場としての都市、ネグレクト、自傷行為、若者の自殺、などなど数え上げたらキリがないほどの社会問題が描かれている。が、「社会問題」と一般化した途端、個々の実存が捨象されてしまう。

映画『ミッドナイトスワン』を有り難がってはいけない理由。
・https://lociepatay.hatenablog.jp/entry/2020/10/02/073453
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