Ninico

ミッドナイトスワンのNinicoのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
3.7
良作だと聞いてはいたが、絵的に食指が進まず映画館では未鑑賞のままやっと配信で鑑賞。

トランスジェンダーの生き辛さがリアルに描かれ、悲壮感満載ではあるが現在の日本の状況はきっとこうなんだろうなと思わせる説得力があった。

三代バレエのひとつ、チャイコフスキーの白鳥の湖の物語が印象的に使われており、この作品は1人で2役を演じるバレエであることと、夜は人間、昼は白鳥に戻るという設定が、夜の蝶を務めるトランスジェンダー(草彅剛)の主人公の姿に重ねられている。
母親からの虐待で自傷気味の少女を主人公が預かり、少女がバレエに目覚め、主人公が母親がわりとして夢を共に追う姿が描かれていく。その中の様々な思いが、ひとつひとつ重く、痛い。

草彅剛の女装は美しくないし、登場人物の殆どが不恰好に不器用に生きていて、決して綺麗な映画ではない。しかしここで扱われるテーマをこの作品のような形で提示した映画を他に私は思い出せない。それだけでもかなり重要といえるのではないだろうか。トランスジェンダーに全く関わりがない人にこそ観てみてほしい。多分泣くと思う。
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