てとう

ミッドナイトスワンのてとうのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.7
凪沙は幼い海の記憶からずっと「なんで私だけ」という想いを胸に、色んなものを捨てて諦めて孤独に生きてきたんだと思う。中学生ですべて諦観し、自分でお金を稼いでまでやりたいことを見付けた一果のバレエは、しなやかで指先まで美しく身ひとつで一瞬にしてその場を優雅にさせる。凪沙になんとしてでも続けさせたいと思わせる力がスクリーン越しからでもちゃんと伝わってきた。凪沙に母性が目覚めたとき、一果にも愛情はしっかり伝わっていて少しずつ心も距離も近くなっていく姿は涙が止まらなかったな… バレエの先生が「お母さん」と自然と呼んだときの凪沙の嬉しそうな表情が忘れられない。一果がステージ上で思わず溢した「お母さん」に凪沙は囚われてしまうんだよね…
身体が女じゃなくてもお母さんにはなれる。それを言ってあげられる人が近くにいないことが悲しい。焦らずにしっかりお金を貯めてちゃんとした病院で手術をしたら彼女は今頃お揃いのコートとヒールの高いパンプスを履いて一果の隣を歩いていたかな。きっと凪沙は母になれて幸せだったと思う。

草彅剛さん、素晴らしかった。今年の映画賞根こそぎ持っていきそうな気がします。そして新人の服部樹咲さん、バレエも演技もとても素晴らしかったです。

最近LBGTQの作品が増えてきていて、ドラマや映画の選択肢のなかにあるのが当たり前になってきて嬉しい。ひとそれぞれの幸せのカタチを見付けやすい世の中になればいいなぁ。
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