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ミッドナイトスワンのGKのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
3.0
最初に言っておきたいのは、役者の演技は最高だということ。草彅剛は草彅剛だけど、自分は違和感なく受け入れることができた。
そして一果役の服部樹咲。彼女はバレエのコンクールで賞を取るような才覚の持ち主なのだけど、そのバレエに泣かされる。

彼女が踊るシーン、演出以上の何か、希望だろうな、感じるものがあり、どれも素晴らしかった。

その一つ一つのシーンに関しての「映画らしさ」は満点だと思う。


ただし、脚本がヒドい。
序盤中盤まではいいが、肝心の終盤が目も当てられない。

とにかく凪沙を「弱者」「かわいそうな存在」として描くことしかせず、どこにも救いがない。それを表現するために、彼女という存在の尊厳さえも踏みにじる。
リアリティを追求するのと、リスペクトすることはトレードオフではない。両立し得るものだ。ただ本作はトレードオフになっており、かつそのリアリティを持って伝えようとしたこと、現実への解釈があまりにも時代錯誤だ。
作中に「LBGTって流行ってるんでしょ?」というオジサマが出てくるのだが、まさにその言葉と同じ姿勢だった。

LBGTQである人々を「弱者」として表現すべきではないと私は思う。そう表情し続ける限り、状況は変わらない。
今は、彼ら彼女らにも、どんな個性を持っている人であっても、夢や希望があること、寄り添う人がいること。そしてその未来は明るいこと。そういったことを伝えるべきではないか。
弱者として描き続ける限り、自分たちとは違う「かわいそうな存在」と位置づける限り、溝はうまらない。


監督は9月末、自身のTwitterでこうツイートしている。
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多様な意見がある。素晴らしいこと。人の数だけ意見が富んでる。素晴らしいこと。でも自分の映画を社会的にはしない。これは娯楽。娯楽映画で問題の第一歩を感じれればいい。社会問題は誰も見ない。映画祭やSNSでインテリ気取りが唸り議論するだけ。なので娯楽です。多くの人に観てほしい。それだけ
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では彼が後半で目を背けたくなるシーン、彼女の尊厳を傷つけてまで表現したかったことは何なのだろう?泣かせるための手段?
それにしてはお粗末じゃないですか?
エンタメであっても観た人は何かしらのメッセージを受け取ってしまう。その影響を考えていますか?


日本のダイバーシティへの理解、浸透に対して悲観的になる作品だった。

救いは出演者の演技。冒頭にも書いたように素晴らしいです。
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