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由宇子の天秤のブタブタのレビュー・感想・評価

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
5.0
《ジョンベネ事件》の犯人も真相も実は既に全て分かってて、それが余りにも単純で呆気ない真相で且つ余りにもおぞましい出来事なので永遠に明らかにされないのかも知れない。
と『由宇子の天秤』を見て思う。

一連の東海テレビ制作のドキュメンタリー作品、特に『さよならテレビ』の制作現場の様な「報道と真実」を巡るテレビスタッフ達の苦悩や衝突や無理解な上からの圧力、其れをバネにして其れでも真実を追求する由宇子らテレビマン達…と途中迄はそう描かれる。
しかし途中から人間の持つ闇とかそう言う安っぽい表現では到底理解不能な余りにもおぞましいモノを見せられる。

話しが飛びますが京極夏彦【百鬼夜行シリーズ】って妖怪の仕業としか思えない様な不可解で不気味な事件が次々と起こるものの、その裏側や真実は全て人間の仕業によるモノ。
目には見えない得体の知れない、しかし確実に存在する人を操り堕落させ、人の心を破壊するとても邪悪でおぞましい存在。
それは「魔が差す」とか自分でも理解出来ない感情だったり、昔の人は其れを《妖怪》の仕業だと考えて様々なタイプの妖怪を生み出した。

《女子高生イジメ自殺事件》に始まりその女子高生と関係を持った(?)教師の自殺、更に由宇子の父親と経営する塾の女子生徒、連鎖的に次々とウィルスの様に不幸の連鎖や何か「目には見えない悪意や何者かの邪悪な意思」みたいな物が伝染し蔓延していく。

由宇子を事件の真相を追う探偵だと考えると、被害者や守るべき存在や味方だった筈の人間がある瞬間で何か理解不能な邪悪な存在に取って代わられてしまう。
これってもはや《妖怪》の仕業としか思えない。

京極夏彦の百鬼夜行シリーズでは《妖怪》に取り憑かれた人を救う為に当然フィクションなので【憑き物落とし】や【超能力探偵】等の人を超えたキャラクターによって事件は解決する。
しかし由宇子はあくまで普通の人間なのでここまでの悪意と邪悪さに満ちた《真実》にはとても太刀打ち出来ない。

150分超えの大作。
何と言っても瀧内公美さんが素晴らしい。
『岸辺露伴は動かない』で初めて見た?のだけど全然雰囲気が違う。
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