すーとらまん

由宇子の天秤のすーとらまんのネタバレレビュー・内容・結末

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画の感想を言うと自分の倫理観が、はかられる気がして怖い。
そのぐらい鑑賞中、自分の中の正義が、あっち側に行ったり、こっち側に行ったり、すると由宇子に「側ってなに?」と指摘されドッキとしたりと、とにかく自分の立ち位置が最後まで決まらない映画で、それを意図した映画。

基本的には主人公の由宇子の立場、目線で映画を観ているが、由宇子の倫理観は間違っていないと思う。ただその由宇子の倫理観は自分の立場によって大きく異なる。

ある事件のドキュメンタリー監督としての第三者としての正義と
父の経営する塾で起きた事件の当事者?加害者家族としての正義を対比して見せることで、真実を明らかにする事と、真実を隠す事がどちらも正義になりうる。まさに自分の立ち位置により正義なんていくらでも代わりうるって事を突き付けられる。

それぞれが、自分の天秤に自分で測るもの載せ、自分の倫理観で決める訳だから、人の数だけ、立場の数だけ正義が存在する。ならばそもそも正義って何?と深く考えさせられる。

個人的にやはり「正義って何?」の問いに答えは出せないし、出すべきものじゃないのかもしれない。ただひとつ言えるのは、この映画に登場する高校生に手を出した2人の大人は、はっきりと悪と言い切って良いと思った。


最近SNSをはじめとしたネットリンチ的な表現を映画で良く見るが、この映画は直接的な描写はないが、加害者家族の描き方を見れば、容易に何があったか想像できるし、ネットの悪意にさらされた人物がどうなるか、加害者側が被害者へと立場が変わる感じが描かれていて、うまい描き方だと感じた。

加害者と被害者は対の関係で、被害者がいれば当然加害者が存在するし、その加害者、被害者の立場もどちらにもなりうるし、その立場が変われば正義も変わってくる。
本当に答えを出す事は難しい。でもそうやって思考し続ける事が大事なのかもしれない。

ちょっと映画から離れるが、「めい」が娘にそっくりで観ていて辛すぎた・・・
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