ナリキヨ

由宇子の天秤のナリキヨのレビュー・感想・評価

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
4.8
2時間半、取り返しのつかないこと、引くに引けないこと、目の前に広がる後悔絶望の釣瓶撃ち、とにかくめちゃくちゃ疲れた。だけどとにかく目が離せない重量級作品。
由宇子を観てて覚えるのは共感もあるけど、なんというか、私もこんな風に人助けの皮を被った保身に走るんだろうなという、自分も同じことをするであろう自己嫌悪感みたいな事だったり。メイに向けての愛情や献身的な行為に嘘はなかっただろう(それ故に二人の温かいシーンには涙が出てくる)けれども、その裏にはやはり後ろめたさとか汚さとか。
その行為に対して私は、きっと、仕方ないよと言ってしまうだろう。仕方ないよ。そう言ってしまう自分への苛立ち。

裏返され続ける事実や嘘や懺悔の中で、何気に一番まっすぐだったのはメイのお父さんだったのかもな。暴力的で衝動的で家庭に向き合うことに疲れている。しょうもない父親。(はよ生活保護申請しよ!ってめっちゃ心の中で叫んだ)だけどちょっとした事で回復に向かっていく親子関係が、だんだん微笑ましくなるのと反比例して胸をキリキリと締め上げる。



主演はじめ、俳優陣もすごかった。光石研も凄かった、人の良さそうな顔してひたすらに弱くて自分中心。
いろんなレイヤーが重なっていく映画。中心にあるのは事実の在りどころに振り回される心理。

只管胸を締め上げるやるせ無いしキツい映画だけど、素晴らしい映画を観た後の充実感は凄いので、映画が好きな人には是非観てほしい。
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