Shikiboo

アントマン&ワスプ:クアントマニアのShikibooのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

嫌いではないけど…というテンションの作品でした。

良い点は間違いなくスコット・ラングというキャラだと思います。
普段は少し頼りないけど、娘の為ならなんだってやってのける無敵の親父像。アントマンシリーズを観ているファンにとっては熱くなるものがあります。
本作は過去作以上にその点を中心に据えており、その点は良かったと思います。
特に「シュレディンガーの猫」シーン、無数の可能性としてのアントマンが増殖して混乱する中、娘の声を受けて一致団結する場面は非常に良かったです。これはどんな可能性であってもスコットの娘への愛だけは揺らがないという証左であり、世界観設定、キャラ設定、映像演出がガッチリ噛み合った本作の白眉でした。
脇を固める主要キャラ陣も行動の一貫性から細かい台詞回しに至るまで魅力的で上手く描けていたかと思います。


一方、多くの不満や物足りなさを感じたのも事実。

世界観については量子世界という宣伝文句ながら、実態はSWや他の宇宙系MCU作品の焼き直しの域を出ない物だったと思います。
量子世界の「時間が意味を成さない」、「可能性が偏在している」といった特徴的な要素は提示こそされるものの活かし切る事ができず、凡庸な宇宙SF的世界観でしかありませんでした。
個人的には前述の「シュレディンガーの猫」的なドラッギーでカオスなシーンをもっと期待していたので非常に残念です。
これならば異世界ではなく前作同様現実世界でのコメディアクションに徹するべきだったと感じます。

全体のストーリーについても王道で既視感が強く、さらに冗長な内容でした。正直もう一捻り欲しかったところです。
これはカーンや量子世界等馴染みの無い要素を中和するという意味、アントマンらしい爽快な印象を持たせるという意味では擁護的に捉えることもできるのですが、それにしても先の展開が読めて退屈でした。
まあ前作以前も王道と言えば王道なのですが、アクション面での頓知や目まぐるしい状況変化などでワクワク感を持続出来ていたのを考えると、本作は冗長だと言わざるを得ないと思います。

総評として、
家族愛を軸に綺麗にまとまっていた印象こそ受けますが、世界観も相まって既視感が強く凡庸にまとまってしまった作品だと感じました。
スコットや魅力的な主要キャラ自体は上手く描けてましたし、随所に可能性を感じる演出、設定などがあっただけに非常に勿体無く感じました。
★3程度でしょうか。



※他にも一つ一つ挙げていけば大小色々な不満点があります。

ジョナサン・メジャース演じるカーン像も悪くは無かったのですが、ドラマ『ロキ』の在り続ける者と比べるともう一つ物足りなさを感じました。

モードックもといダレンはもう少しいい使い方があったのでは…
唐突な改心やコメディに振りすぎた最期など、雑で勿体無い使われ方だったと思います。ピム、スコット、キャシーそれぞれの因縁もあり掘り下げ甲斐のあるキャラだっただけに非常に勿体無い。
キャシーとの戦いについても一作目でのイエロージャケットとの対峙をもう少し活かして「乗り越える壁」としての機能を強調しても良かったのかな、などと個人的には思います。

スコットらの量子世界からの帰還についても現実世界からのボタンひとつで随分とアッサリ片付けられてしまったように見えて残念でした。キャシーの見せ場として1展開作れる場面だったかと思います。アントマン→ワスプ→キャシーと希望を繋いで行く形を演出できたと思うのですが…。
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