だま

ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記のだまのレビュー・感想・評価

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いじめに傷付いた少女が選んだ遠く離れた沖縄のフリースクール。彼女の目を通して描かれる沖縄。身近に米軍基地がある暮らし。安全や安心が脅かされる日々。どれだけ声を上げ続けても何も変わらない現実。それでも未来のため子どもや孫たちのために人々は闘い続ける。

彼女が沖縄で出会った陽気で優しい人々。でも穏やかに語られる言葉には積み重なった絶望と大きな怒りが込められている。何度も期待しては裏切られ。基地の問題で引き裂かれる人々。沖縄ではまだ戦争は終わっていない。だからこそ人々は明るく振る舞うしかないのだ。

沖縄の問題は日本全体の問題。そんな当たり前のことが自分は分かっていなかった。本土で流れるニュースはごく一部で。表面をなぞるものでしかなくて。そこに暮らす人々の気持ちを真剣に捉えることができていなかった。作中の言葉のひとつひとつが胸に重く響いた。

自分はまだ沖縄に行ったことがない。いつか沖縄に行って。たとえ遠くからでもこの目で米軍基地を見たいと思った。そこに暮らす人々の声をこの耳で聞いてみたいと思った。今すぐ自分に何ができるわけでもないけれど。沖縄の問題について知ろうとすること考え続けることを忘れずにいたい。

少女の成長を描いたドキュメンタリーとしても秀逸。いじめに傷付いた少女が沖縄の人々の優しさに包まれて様々な世界に触れていく。その過程でもっと沖縄を知りたいと考え、色んな人の話しを聞きに行く。沖縄の重い現実を描きつつも。少女の眼差しはどこまでも純粋。

菜の花さんが通うフリースクールがとても素敵な場所だった。子どもからお年寄りまでが同じ空間で学び。お互いの足りない部分を補い助け合っている。そして傷付いた娘を心配しながらも信頼し。遠い沖縄の地へと送り出した菜の花さんのご両親もとても素敵だった。
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