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エルヴィスのmatchypotterのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
3.8
ワールドツアーのジャパンプレミアにて。
生バズラーマン監督と生オースティンバトラー。
バスラーマンはもう『ムーランルージュ』からそのまま出てきたんじゃないかという素敵な雰囲気が漂う監督だった、さすが。

オースティンバトラー、カッコ良すぎるわ。
元々の声が太めで渋いなんて、そして、それが似合って少し優しいフェイス、羨ましすぎる。
エルヴィスプレスリーという“伝説”を見事に演じ切った。

『ボヘミアン〜』のラミマレックも憑依してる感じだったし、『ロケットマン』のタロンエガートンも超絶歌うまかったけど、この『エルヴィス』のオースティンバトラーはとにかく魂がすごかった。

そして、エルヴィスが生きる場所がどこなのか、それをとことん突き詰めて伝えてくる熱量。
2時間39分のやや長尺な本編含め、彼とトムハンクスが、余すことなく手加減なく、伝えてくる。なかなか骨太で力強い作品。

エルヴィスプレスリー。
1960's〜70'sの政治も思想も人種も何から何まで激動のアメリカの真っ只中を、音楽史を塗り替えながら止まることなく突っ走ったシンガー。

世界で最も売り上げたソロシンガーとされており、白人カントリー音楽と黒人ソウル音楽を融合させたロックの先駆け的な存在。

亡くなってから40年以上経ってるのに、彼の楽曲も彼そのものも世界中で愛され続けるシンガー。

その彼が、とあるマネージャーに見染められ、そのマネージャーと共にスターダムを駆け上がり、栄華も衰退も混迷も混沌も、、、すべてを経験しながら、止まることなく進み続けた話。

彼は何を求めて、なぜ走り続けて、何があって、どこに向かったのか。

彼の死の真相が諸説あるっぽいが、そのどの諸説にも通じるような描き方なのも素敵。

そして、トムハンクス。このいわゆる悪徳マネージャー。
エルヴィスの才能とスター性を見い出して囲い込みながら彼をのし上がらせ、一方で財布の紐を握って搾取する。

実話としてもなかなか節操ない悪い奴だけど、彼が言うように確かに彼が彼を見つけて世に出し、マネージメントを続けなければ、エルヴィスの今日まで語り継がれる伝説はなかったかも知れない。

音楽と才能とスター性と流行とビジネス。
いつの世も移り変わりが激しいこの業界の中で、ソロの売上としては歴史上最も輝かしい功績を作ったのは、エルヴィス本人か、この得体の知れないマネージャーか。

冒頭に挙げた最近の著名音楽アーティストの自伝的な映画もしかり、政治、人種、思想、薬物、貧富など、その時々の時代の色んな側面に寄り添う音楽。

そこには必ず先駆者となり誰も歩んだことのない世界を歩くアーティストがいて、考えられないほどの財を成し、財を使い、誰にも理解できない境地に足を踏み入れ、1人苦悩する。

本作もそういう一面も見せたり、マネージャーとのビジネス色や駆け引きもあったり、結構政治や現実と向き合う切実なテイストも多い。

が、彼エルヴィス本人は愛に触れ、愛に生きようとし、1人でも多く、世界にその愛を音楽で届けようとしたことも伝わってくる。

彼が立った最初のステージ、この彼の音楽と動きに、我慢しきれず悶絶しながら絶叫する女性たち。
このシーンが、アメリカ音楽史の象徴というか、セックスシンボルが生まれる瞬間を見れるシーン。

長いけど、インパクトあり、テンション上がるライブあり、シリアスでドライなドラマとショービズもあり。
見所多くて彼の魂がそこにある。とても「映画を観た!」という満足感が得られる映画。


F:1773
M:3127
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