ブラックユーモアホフマン

子供はわかってあげないのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)
4.2
上白石萌歌に魅了され続ける2時間18分。
そして恐るべしトヨエツ。やっぱりすごい。

そう認識されてないと思うけど、実は沖田さんって尺長めなんだよな。『横道世之介』が一番分かりやすくて160分。
前作『おらおらでひとりいぐも』も137分で、基本2時間超える。2時間以内に収まることの方が稀。

で、やっぱ今回ちょっとさすがに長く感じた。退屈はしなかったけど、もっとテンポよくコンパクトにまとまってた方が好み。
ゆーったりと間を贅沢に取るのが沖田さんの、ユーモアも含め、独特なテンポなのである程度仕方ないとは思うんだけど。

しかしキャスティングの勝利。キャストの魅力で十分持ってる。先に挙げた2人はもちろん、全員輝いてた。
古舘寛治さんはどの作品においても常に古舘寛治なんだけど、それでいて完全にその役そのものでもあって、時に可笑しくチャーミングで、時に恐ろしくもあるから凄い。
千葉雄大も見事。言葉で説明しなくてもそういう人だと分かる登場シーンから、涙腺ぶっ壊れてるコミカル演技まで板に付いてる。
子役演出も素晴らしくて、みんなイキイキしてた。

とっても爽やかな話でそれはそれでいいんだけども、僕は多少毒のある方が、やはり好きだな。トヨエツが細田くんに酒を強要する辺りは恐ろしい事態に陥っていく予感もさせるシーンだったが、そうはなっていかず。10年以上会っていない実の娘がすっかり成長した姿で目の前に現れて、しかし案外すんなりと親子らしくなってまんざらでもない、でも束の間の親子ごっこは終わりの時間を迎え、若い男の子によって連れ戻されてしまう、という時の元新興宗教教祖の取る態度や行動はもっと恐ろしくても良さそうなもんだけど、意外と人が出来ている。僕はもっとそこに表出してしまう中年男の醜悪な実像みたいなものに興味があった。

もう一点、それとも繋がるかもしれないけど、もじくんが美波のことを思うと一人称が「俺」になってしまうという描写。これは正直、女を女として相対化し自らの男性性が無自覚に意識されているということだと思うので、それを単に”いい話”とか彼の”成長”みたいに描かれているのが、ちょっと気持ち悪かった。

トヨエツの描写もそうだけど、女性が魅力的だからこそ、男の「男らしさ」たるところに向ける視線の甘さが気になった。

とは言え、ユーモアのセンスもさすがで沢山笑ったし、新たな夏休み映画の良作、且つ沖田さんの代表作が生まれたと言っていい出来。

劇中アニメも秀逸。左官??ぬりかべ??あんなぶっ飛んだアニメがあったら思わず僕も見てしまうだろうな。

【一番好きなシーン】
・冒頭。リビングの奥から広い画角で長く回して、家族全員見えなくなっても続くカット。すごいと思った。
・一緒に踊る古舘寛治。愛おしい。
・「とりあえず入りなさい」