ウィルキンソンレモン

ファンファーレが鳴り響くのウィルキンソンレモンのレビュー・感想・評価

ファンファーレが鳴り響く(2020年製作の映画)
4.2

冒頭の神様、唐突に始まるミュージカル。
急に登場する祷さんと笠松さんが教室で対峙するシーン
からのタイトル。引き込まれました。

監督の世界観、アナーキズムのようでありながら
優しい眼差しをもって社会を皮肉る今作は大変魅力的でした。
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”少年犯罪” から着想し企画をしたとインタビューで拝見しましたが、
少年が犯罪を犯す過程を丁寧に取材されていませんし
ドキュメンタリーでも無いです。
そんな史実やリアリティはおいといて、コテコテのフィクションで、
「映画、観たら楽しい」
という原点を忘れていない作品です。
ところどころのシーンで、笑ってしまいました!

劇中では、祷さんと、笠松さんが
社会や、自分自身への不満をブチまけながら逃避行してゆき、
その鬱憤に巻き込まれて、色んな人が殺されてゆきます。
祷さん、笠松さんが劇中殺したいと思って殺す人、
殺される理由もなく理不尽な殺され方をする人も出てきます。
例えば ”テキサス・チェーンソー”みたい笑っちゃうような
B級スプラッターではなく、

かといって旬な俳優と女優主演の青春を謳歌するような
よくある恋愛ドラマでもない。
斜め上をいっていらっしゃって、そこも魅力的と思えました。

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欲を言えば笠松さん祷さんの役に感情移入する為に、もう少し
彼らの心情を、繊細に、バックグラウンドなども含め
描いてほしかった、というところでしょうか。
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監督は、主人公とヒロインを
”吃音症” ”親:社会と折り合いがうまく行かない”
”血を見たい”という風に設定をつけていらっしゃって
社会(彼らでいうと、高校、家庭、コミュニティ)に弾き飛ばされ
行き場のない二人が、思いのまま共にして
倫理観もぶっ飛ばして逃避行を続けて行くすえ

最後、ファンファーレが鳴り響くのではなく、
パトカーのサイレンが鳴り響くわけです。

衝動で動いていた日々は、おしまいになって
”大人”になってゆく。
最後、そんな”大人” ”社会人”として過ごしていた
笠松さんは殺され、結局作品から否定されます。
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スプラッター要素はあるけれど、
青春を取り戻せない我々大人の、

歯がゆさや懐かしさ、物悲しさが、この作品の魅力でしょうか。

俳優女優、技術の方々の力も、自主のようなエネルギーを感じ、素晴らしい作品です。

ウィルキンソンレモンさんの鑑賞した映画