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ブラックアダムのコウのネタバレレビュー・内容・結末

ブラックアダム(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)第11作目。
五千年前に小国カーンダックに現れた最恐の破壊神ブラックアダム。その封印を偶然にも解かれた彼が現代に蘇った事から、スーパーヒーローチームであるジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ(JSA)が彼を制圧にかかるが…。

元々はシャザム!のヴィランとして登場予定だったブラックアダムですが、ドウェイン・ジョンソンの人気により単独作となったとか。
気になる方はDCEU第7作目「シャザム!」視聴と、実写映画では初登場キャラクターのJSAメンバー4人が登場していますので、事前知識として少し調べておくと良いかもしれません。とは言え、この作品のみでも十分楽しめます。

とにかくブラックアダムがめちゃくちゃ強い!
ドウェイン・ジョンソンの鍛え上げられた肉体が、その強さに説得力を持たせています。
アクションシーンでのスロー描写とスピード感ある描写との緩急も良かったです。

ブラックアダムは正統派ヒーローではないものの、そういったヒーロー達に目を向けられてこなかった人々が、”アメリカのスーパーヒーローなんて知った事か!実際に自分たちを解放してくれたブラックアダムこそヒーローだ!”と叫びたくなる気持ちは十分に理解できます。DC作品にも関わらず、ヒーローの代名詞でもある彼らの存在が否定される演出はおもしろいなと感じました。

シャザムはギリシア神話の神々の名前の頭文字から作られたワードですが、ブラックアダムはエジプト神話の神々の名前の頭文字から作られたワードという設定。同じ “SHAZAM” でもそれぞれ由来が違うんですよね。
少年ビリーが闇に落ちることなくヒーローとして力を正統に使っているのに対し、アダムは息子を失った事により闇落ちし、アンチヒーローとして封印されます。
しかし、本来であれば勇者である息子フルートがビリーと同じく正統派ヒーローとして生き続けるはずだった事実を思えば、SHAZAMの力を ”魔術師の呪い” だと言って手放したアダムの言葉にも納得してしまいます。

“あなたたちはすぐそうやって世界を善と悪に分けて考える。自分の基準で単純に。”
中盤でアドリアナが言うこの台詞、真理をついているなと感じました。多くの人間に二面性がある様に、ヒーローもそうではないのか?己の基準だけで善悪を決めていいのか?完全に善である存在だけがヒーローなのか?と。

“選ばれし者だけがヒーローになれる”
冒頭で出てくる少年が、アダムの息子フルートである事が中盤で明かされますが、この演出がとても良かった。
アダムは真のヒーローは息子であって自分ではないと力を手放しますが、息子フルートが倒すはずだった悪の王を倒し世界を救うために覚醒します。
選ばれし者だけが… と彼は言っていましたが、息子から力を与えられた時、彼は既に”選ばれていた”んですよね。

アモンが終始一貫してアダムの事をヒーローとして見ていたのがとても微笑ましかったです。無邪気な少年キャラクターであるアモンは、フルートを失ったアダムにとってはむげに出来ない存在ですよね。
彼の部屋にあるスーパーヒーローたちのポスターやフィギュアが、アダムとホークマンとの対決時に壊されていく演出はおもしろくて、観ながらニヤリとしてしまいました。笑

魔術師に選ばれなくとも、運命と息子に選ばれた”黒き戦士”ブラックアダム。
スーパーマンも登場し続編が期待されるラストなだけに、事実上の打ち切りはとても残念です。
今後のDCU展開では、こうした続編打ち切りとなる作品がない事を祈りたいですね。
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