Ninico

バビロンのNinicoのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.8
ディミアン・チャゼル監督の新作ということで早速IMAXで鑑賞。3時間もあったなんて、家に帰るまで知らなかった。
そのくらいドキドキしっぱなしであっという間。終盤ではまだ終わらないでほしいと願ったし、劇中繰り返し流れたJustin Hurwitzの音楽をエンドロールではIMAXの音響で堪能できたのはこの上なく幸せだった。帰宅中にはそのサントラは私のiPhoneのプレイリストに追加された。
素晴らしい映画体験だった。

まずデイミアン・チャゼルといえば、セッション、ラ・ラ・ランドの成功が未だ記憶に新しい。(ファースト・マンは興行的には目立った結果にならなかった)
この2作品は私も大好きだが、ジャズミュージシャンの菊池成孔がセッションとラ・ラ・ランドを評する際にチャゼル・マナーと呼び蔑んだ手法がある。最初に一発強烈なカマしをして脳みそをクラクラさせて強引に話を進めてくる、刺激に飢えている観客を依存させるようなドラッグ的な手法だというようなことを仰っていたのだか、今回のバビロンでもそれは顕在で、だからこそ、私にはいい意味で物凄く面白かった。

タイトルが出てくるまでに何名人物が登場しただろう?象の排泄を浴びる者、パーティーでの夥しい狂乱の人々、飛び散る精液、飛び出す彫像、運命的な出会い。

ラ・ラ・ランドの自己模倣かと思うほどのロマンスや似た旋律があるのだが、今回は主題がもっと別ものであり、映画とそれに関わる人々の栄枯盛衰、「映画そのものへの滅私の愛」が描かれている。
だからラ・ラ・ランドと似ていると感じる部分はあったもののそれはあまりマイナスにならない。

何気ない会話劇での人物の言葉も一つ一つ重要で、
「人は現実を忘れるために映画館へ行く」という言葉があったが、まさにチャゼル監督は現実逃避のための娯楽としての映画を作り続けている。だから民衆の飢餓感を埋める恋の夢を強烈な体験にさせるようなチャゼル・マナーに満ちたラ・ラ・ランドもやるし、今回のバビロンのように100億円以上かけてブラピとマーゴットロビーを起用し、観たことがないサイレント映画時代の艶やかな映像をCGなしで撮る。終盤では映画史を振り返るような映像コラージュ場面があるが、雨に唄えばも、マトリックスも、誰もが知る名作の映像が多数使用されている。この部分にも潤沢な資金が投入されているだろう。

ここには到底書き切れないが映画好きやジャズ好きが喜ぶ仕掛けがふんだんに散りばめられている。
音響も映像もクソ素晴らしいので、ドルビーアトモスで観るかIMAXで観るか、その2択である。

(CGなしなんだよ!カメラだけだよ!観る前に思い出してね。)

映画館メモ☆日比谷TOHOシネマズ
スクリーン4 H18 この席は迫力凄い
Ninico

Ninico